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東京地方裁判所 平成5年(ワ)14324号 判決 1996年2月23日

原告

武田澄江

林静枝

右両名訴訟代理人弁護士

花岡敬明

被告

ニコス生命保険株式会社

右代表者代表取締役

大野和夫

被告

浜崎研治

右両名訴訟代理人弁護士

高橋孝志

被告

泉俊光

右訴訟代理人弁護士

大江忠

大山政之

被告

渡邊衛

佐藤益江

右両名訴訟代理人弁護士

小島昌輝

主文

一  被告ニコス生命保険株式会社、同浜崎研治及び同泉俊光は、各自、原告武田澄江に対し、金三七五八万五〇四四円及びこれに対する被告ニコス生命保険株式会社、同泉俊光については平成五年八月二四日から、被告浜崎研治については同月二八日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告ニコス生命保険株式会社、同浜崎研治及び同泉俊光は、各自、原告林静枝に対し、金三七四四万七八六円及びこれに対する被告ニコス生命保険株式会社、同泉俊光については平成五年八月二四日から、被告浜崎研治については同月二八日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らの被告ニコス生命保険株式会社、同浜崎研治及び同泉俊光に対するその余の請求及び被告渡邊衛及び同佐藤益江に対する請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、原告らと被告ニコス生命保険株式会社、同浜崎研治及び同泉俊光との間においては、原告らに生じた費用の四分の一を右被告らの負担とし、その余は各自の負担とし、原告らと被告渡邊衛及び同佐藤益江との間においては、全部原告らの負担とする。

五  この判決は、第一、二項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  原告らの請求

一  被告らは、各自、原告武田澄江に対し、金七五一八万八九円及びこれに対する被告渡邊衛、同佐藤益江については平成五年八月二二日から、被告ニコス生命保険株式会社、同泉俊光については同月二四日から、被告浜崎研治については同月二八日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、各自、原告林静枝に対し、金七四八八万一七五三円及びこれに対する被告渡邊衛、同佐藤益江については平成五年八月二二日から、被告ニコス生命保険株式会社、同泉俊光については同月二四日から、被告浜崎研治については同月二八日から、それぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、被告ニコス生命保険株式会社(以下「被告ニコス」という。)との間で終身型一時払式変額保険契約を締結して、ノンバンクからの借入金をもって保険料を支払い、その後、右保険契約を解約して解約返戻金を受領した原告らが、右受領した解約返戻金額と右借入金の返済金額との差額の損失について、①被告ニコスの従業員である被告浜崎研治(以下「被告浜崎」という。)に対しては、右保険契約の勧誘に際して説明義務違反があったとして民法七〇九条に基づき、②被告ニコスに対しては、被告浜崎の使用者としての責任があるとして民法七一五条一項又は保険募集の取締に関する法律(以下「募取法」という。)一一条一項に基づき、③被告泉俊光(以下「被告泉」という。)に対しては、生命保険会社であるアリコジャパンの従業員であった同被告が、原告らに対し、右保険契約の締結に先立ちアリコジャパンの変額保険の勧誘をした際、説明義務違反があったとした上、同被告による紹介で被告浜崎を通じて右保険契約を締結したものであるから被告泉の右一連の行為は不法行為を構成するとして民法七〇九条に基づき、④被告佐藤益江(以下「被告佐藤」という。)に対しては、被告渡邊衛(以下「被告渡邊」という。)の経営する税理士事務所に勤務する被告佐藤が被告泉を原告らに紹介し、被告泉が原告らに変額保険の勧誘をした際、同席して一緒に勧誘したとし、被告佐藤にも説明義務違反又は被告泉の説明義務違反につき幇助の責任があるとして民法七〇九条又は七一九条二項に基づき、⑤被告渡邊に対しては、被告佐藤の使用者としての責任があるとして民法七一五条一項に基づき、被告らの右各不法行為により右差額損失相当額の損害を被ったとして、右損害及び弁護士費用について損害賠償を求めた事案である。

一  基礎となる事実

1  当事者

(一) 原告武田澄江(昭和二年一一月六日生。以下「原告武田」という。)は、昭和二〇年、白百合高等女学校を卒業し、昭和二六年ころからフランス語の教師の職にあり、現在に至っている。(甲二五、原告武田本人、弁論の全趣旨)

(二) 原告林静枝(原告武田の妹。昭和四年一一月二五日生。以下「原告林」という。)は、昭和二六年、日本女子大学を卒業した後、農林水産省林業試験場に勤務したが、昭和三二年、結婚のために退職し、以後、家庭の主婦として現在に至っている。夫の林敬太(以下「敬太」という。)は、昭和六二年に農林水産省を退職した後、財団法人日本自然保護協会の嘱託をして現在に至っている。(甲二六、原告林本人、弁論の全趣旨)

(三) 被告佐藤は、被告渡邊の経営する税理士事務所(以下「被告渡邊の事務所」という。)に事務員として勤務しているものであるが、昭和六一年ころ、原告らの母なをから所得税確定申告の依頼をされたことから原告武田を知るようになり、昭和六三年一月ころには、原告武田から直接税務相談を受けるようになった。(甲二五、丁一、二五の1、2、原告武田、被告佐藤各本人)

(四) 被告泉は、昭和六一年四月からアリコジャパンに勤務し、昭和六二年九月に変額保険販売資格を取得し、同年一〇月には上級生命保険設計士の資格も取得し、昭和六三年一一月ころは、同社の青山エイジェンシーオフィスに配属されていた。(丙一、被告泉本人)

(五) 被告ニコスは、生命保険事業等を行うことを目的として昭和六一年七月一日に設立されたものであり、設立時の商号をエクイタブル生命保険株式会社と称したが、平成四年四月一日に現商号に変更した。(弁論の全趣旨)

(六) 被告浜崎は、昭和六二年七月から被告ニコスに保険外務員として勤務するようになり、同年八月一四日に変額保険販売資格を取得し、平成元年六月当時、丸の内支社に配属されていた。(乙四、被告浜崎本人)

2  変額保険契約締結に至る経緯

(一) 被告佐藤は、昭和六三年六月二三日に原告らの母なをが死亡したことから、原告らから相続税の申告の依頼を受け、同年一一月ころまでの間に、原告武田が必要書類の授受等で数回被告渡邊の事務所に赴いた際、折に触れて、同原告から、その所有の自宅の土地が高騰していたことなどから、同原告自身の相続税対策について相談を受けるなどしていた。(甲二五、二六、丁二五の1、2、原告武田、被告佐藤各本人)

(二) 被告佐藤は、同年一一月一六日、被告渡邊の事務所の前身の税理士事務所に勤務していた関係から同被告の右事務所に出入りしていた被告泉を伴って、原告武田方に赴き、被告泉において、同原告及び原告林に対し、相続税対策として、終身型一時払式変額保険(以下「本件変額保険」という。)の説明と勧誘をし、同月二二日にも、被告佐藤及び同泉は、原告武田方に赴き、被告泉において、同原告及び原告林に対し、原告林の夫敬太の同席のもとで、原告ら用に作成して持参した「PF型相続対策・ファイナンスプラン設計書」(甲一の1、2。以下「本件ファイナンスプラン設計書」という。)に基づき、本件変額保険の説明と勧誘をした。(甲一の1、2、二五、二六、丙一、丁二五の1、2、原告武田、同林、被告泉、被告佐藤各本人)

(三) 原告武田は、同年一二月七日、本件変額保険への加入に備えて、被告泉の指示した医院で健康診断を受けたが、その結果は、保険加入の基準に達していなかった。(甲二五、丙一、原告武田、被告泉各本人)

(四) 被告佐藤及び同泉は、平成元年二月一三日、再度、原告武田方に赴き、被告泉において、同原告及び原告林に対し、本件変額保険の説明と勧誘をした。(甲二五、二六、丙一、丁二五の1、2、原告武田、同林、被告泉、同佐藤各本人)

(五) 原告武田、同林及びその夫敬太は、同年三月二三日、本件変額保険に加入するために被告泉の指示した医院で健康診断を受けたが、その結果は、原告林については謝絶(加入適格体でないこと)、原告武田及び敬太については再検査となった。原告武田は、その後、同年四月から六月にかけて、被告泉の指示した別の医院で三回健康診断を受けたが、その結果は、いずれも謝絶であった。一方、敬太は、その時点で保険加入を断念し、再検査を受けなかった。(甲二五、二六、丙一、丁二五の1、2、原告武田、同林、被告泉各本人)

(六) 被告泉は、原告らについて、健康診断の結果から、アリコジャパンの本件変額保険への加入は困難であったことから、同年六月三〇日ころ、同社の同僚を介して被告ニコスの従業員である被告浜崎と電話で連絡を取り、本件変額保険への加入を希望している者として原告らを紹介した。(乙四、丙一、被告泉、同浜崎各本人)

3  変額保険契約の締結とその後の解約

(一) 被告浜崎は、平成元年七月一〇日ころ、原告武田のもとに初めて電話を入れて、同被告が同原告宅を訪問する日時を同月一五日午前一一時とし、その際医師を同行して医務検査をすることの了解を取った上、右日時に医師を同行して、同原告宅に赴いた。同原告宅において、まず、右医師が同原告及び原告林の健康診断をして、原告武田宅から帰った後、同日午後零時三〇分ころ、右医師をバス停まで見送って戻った被告浜崎は、原告らに対し、被告ニコスに対する生命保険契約申込書用紙二通を交付し、その場で、原告らは、右用紙の保険契約者通信先欄、被保険者欄、死亡保険金受取人欄に所要の記載をした上、それぞれ、保険契約者及び被保険者として署名押印をし、その余の欄については、同被告において、原告らの意思確認をしながら所要の記載をして、原告武田については、保険契約者及び被保険者を同原告、死亡保険金受取人を原告林、保険金二億円、保険料八七四六万円とする、原告林については、保険契約者及び被保険者を同原告、死亡保険金受取人を敬太五〇パーセント、原告武田五〇パーセント、保険金二億円、保険料八二二一万二〇〇〇円とする各終身型一時払式変額保険契約の申込書(甲二の1、2、乙一、二の各1)を作成し、これらを同被告に交付して、変額保険契約の申込をした(以下、右各申込みに基づいて成立した各変額保険契約を「本件変額保険契約」という。)。(甲二の1、2、甲二五、二六、乙一の1、二の1、4、四、原告武田、同林、被告浜崎各本人)

なお、同日の原告武田方における被告浜崎の原告らに対する変額保険についての説明の有無及びその内容、程度についての判断はしばらくおく。

(二) 被告浜崎は、同月一七日、原告らの本件変額保険契約の申込書の内容に沿った保険設計書(甲四の1、2。以下「本件保険設計書」という。)を作成して、同月一九日、原告らに郵送し、原告らは、翌二〇日ころ、これを受領した。(甲四の1ないし3、二五、二六、乙四、原告武田、同林、被告浜崎各本人)

(三) 原告武田は、同年八月四日、自宅の土地建物にオリックス・クレジット株式会社(以下「オリックス」という。)を根抵当権者、債務者を原告ら、極度額を一億八〇〇〇万円とする根抵当権を設定し、同月七日、その旨の登記手続を了した上、同月八日、オリックスから、本件変額保険契約の保険料及び登記費用、鑑定料等の経費の支払資金として九四二四万円を借り入れ、同月九日、被告ニコスに保険料八七四六万円全額を払い込んだ。これにより、原告武田の本件変額保険契約は、同年九月一日に成立した。

(甲五、六の1、2、二一の1、2、二五、乙一の2、四、原告武田、被告浜崎各本人、弁論の全趣旨)

(四) 原告林は、同年八月二四日、自宅の土地建物にオリックスを根抵当権者、債務者を同原告及び敬太、極度額を一億八〇〇〇万円とする根抵当権を設定し、同月二五日、その旨の登記手続を了した上、同月二八日、オリックスから、本件変額保険契約の保険料及び登記費用、鑑定料等の経費の支払資金として九一九九万円を借り入れ、同月三〇日、被告ニコスに保険料八五三四万円全額を払い込んだ。これにより、原告林の本件変額保険契約は、同年九月一日に成立した。なお、原告林については、右保険契約の申込み時の保険料は、八二二一万二〇〇〇円であったが、その後、健康診断の結果、保険料が割り増しとなり、八五三四万円となった。(甲八、九の1、2、二二の1、2、二三、二六、乙二の2、3、四、原告林、被告浜崎各本人)

(五) 原告武田は、被告ニコスに対し、平成四年一一月四日、本件変額保険契約の解約請求をして、右契約は同月六日解約となり、同月一一日、被告ニコスから解約返戻金四七六〇万七八四円を受領した。そして、同原告は、同月一二日、オリックスに対し、前記借入金の累積元本の返済として、一億一五九五万八七三円を支払った。その差額の損失は、六八三五万八九円となる。(甲一四ないし一六の各1、二五、乙一の3、原告武田本人)

(六) 原告林は、被告ニコスに対し、平成四年一一月四日、本件変額保険契約の解約請求をして、右契約は同月六日解約となり、同月一一日、被告ニコスから解約返戻金四四七八万六三四円を受領した。そして、同原告は、同月一二日、オリックスに対し、前記借入金の累積元本の返済として、一億一二八六万二二〇七円を支払った。その差額の損失は、六八〇八万一五七三円となる。(甲一四ないし一六の各2、二六、乙二の5、原告林本人)

二  争点

主たる争点は、①被告泉との関係では、被告泉の変額保険勧誘の際の不法行為を構成する説明義務違反の有無及び右義務違反と原告らの本件変額保険契約締結による損害との相当因果関係の有無、②被告佐藤及び同渡邊との関係では、被告泉による変額保険勧誘の際の被告佐藤の被告泉と共同しての、又は同被告を幇助しての勧誘の有無及び不法行為を構成する説明義務違反の有無並びに右義務違反と原告らの本件変額保険契約締結による損害との相当因果関係の有無、③被告ニコス及び被告浜崎との関係では、被告浜崎の変額保険の勧誘及び契約締結の際の不法行為を構成する説明義務違反の有無、④右各説明義務違反と相当因果関係のある原告らの損害額である。

1  原告らの主張

(一) 変額保険の勧誘の際の説明義務

(1) 変額保険は、昭和六一年七月に初めて認可され、同年一〇月からその発売が開始されたものであるが、従来の生命保険(定額保険)と異なり、保険契約の資産(保険料積立金)を運用するために設定された特別勘定においてその資産を主として株式等への投資によって運用し、その運用実績に基づき、保険金額や解約返戻金(解約払戻金ともいう。)を変動させる仕組みの生命保険である。死亡・高度障害の際の基本保険金額が保証されるだけであり、変動保険金の額には保証がなく、契約を解除した場合の解約返戻金の額も、右運用実績に応じて増減し、最低保証はない。

したがって、経済・金融情勢及び運用の巧拙によって高い利益(ハイリターン)が期待できる反面、保険契約者が変動のリスク(ハイリスク)も負うことになるという、従来の保険にない特質を有するものである。

(2) 右に述べたように、昭和六三年一一月ないし平成元年七月当時、変額保険が被勧誘者にとってなじみのある商品ではなく、変額保険の特質も世間一般に浸透していたとまではいえない状況にあったのであるから、保険会社と保険契約者の対比及び変額保険の特質と販売状況からみて、変額保険の勧誘に際しては、保険会社側には、信義則上、契約者が契約の締結の結果不測の損失を被らないように十分配慮すべき義務があり、契約者側には従来の保険(定額保険)に関する程度の知識しかないことを念頭に置いて、従来の保険との本質的ないし重要な相違点及び危険性の内容について十分説明すべき義務がある。

具体的な説明の範囲としては、パンフレットや契約のしおり等の印刷物を交付しただけでは足りず、また、単に保険金額や解約返戻金が変動するなどの説明をしただけでは足りず、変額保険の特殊性や危険性について十分説明することが必要である。さらに、本件のように相続税対策としての終身型一時払式変額保険については、保険金額や解約返戻金が借入金の元利合計額を下回る場合もあり得ることの説明も必要である。

そして、保険会社の勧誘員がこれらの説明義務を怠ったときは、不法行為を構成し、また、募取法一一条一項に該当するものというべきである。

(二) 被告泉の説明義務違反及び原告らの本件変額保険契約締結による損害との相当因果関係

(1) 被告泉には、生命保険募集人として、原告らに対して変額保険の勧誘をするに際しては、右(一)で述べたような説明義務があったにもかかわらず、募取法一五条二項に違反する本件ファイナンスプラン設計書を用いた上、ハイリターンの側面のみを強調する説明をして勧誘し、原告らは、右説明により、一時払保険料を金融機関から借入れをして変額保険に加入することにより相続財産が減額評価され、保険金により相続税が賄われてなお十分余裕が生じるものと信じ込まされた。これは、右説明において、変額保険の運用利回りと借入金の利息との関係についての説明が全く欠落していたことによる。

したがって、被告泉には、右説明義務の違反があったものというべきである。

(2) 被告泉は、原告らがアリコジャパンの変額保険加入のための健康診断で謝絶となったにもかかわらず、原告らを被告ニコスの変額保険に加入させるために被告浜崎を紹介した上、一時払保険料のオリックスからの借入れ及び右保険料の被告ニコスへの支払にも関与している。さらに、被告泉は、右紹介に際して、被告浜崎に対して、原告らの加入意思の確認が取れていること、保険金額は最高の二億円でよいこと、医務審査を先にして欲しいことなどを連絡しており、このことが、後述のような被告浜崎の原告らに対する勧誘時の説明の省略、すなわち説明義務違反の原因ともなっている。

したがって、被告浜崎は、いわば、被告泉の原告らに対する勧誘行為を承継した状態で原告らに対し本件変額保険契約の申込みをさせたものであって、このことは、二人の勧誘者が互いに他方の行為を利用する関係で原告らを右申込みにまで導いたものと評価すべきであり、被告泉の右一連の行為と右契約締結の結果原告らに生じた損害との間には相当因果関係があるというべきである。

(三) 被告佐藤の説明義務違反及び原告らの本件変額保険契約締結による損害との相当因果関係

被告佐藤は、変額保険について一通りの知識を有していた上、原告らに対し相続税対策として変額保険への加入を勧める目的で被告泉を紹介したものである。そして、被告佐藤は、被告泉が三回にわたり原告らに対し変額保険の勧誘をした際、終始同席して、被告泉の説明にうなずくという行動により原告らを信頼させ、被告泉の勧誘行為に協力加担していたものである。生命保険の相談をも業務内容としていた被告渡邊の事務所における被告佐藤の職務及びそれまでの原告らとの関係に照らすと、被告佐藤は、変額保険販売資格の有無にかかわらず、右変額保険勧誘との関係においては、勧誘者に準じる立場にあったものというべきである。

したがって、被告泉に右(二)のとおり不法行為責任が生じる以上、被告佐藤にも、幇助者として共同不法行為責任が生じるものというべきである。

(四) 被告浜崎の説明義務違反

被告浜崎は、平成元年七月一五日当日、原告武田宅において、被告浜崎の同行した医師による原告らの健康診断が終了した後、原告らに本件変額保険契約の申込書に署名押印をさせるなどして、右申込書を作成させ、その提出を受けたのみで、原告らに対し、本件変額保険について全く説明をしなかった。被告浜崎は、同日、原告武田宅に「会社案内」(甲二八)を置いていったが、その内容についても何ら説明をしておらず、このような書面(パンフレット)を原告らに交付したからといって、右(一)の説明義務を尽くしたことにはならない。また、被告浜崎は、その後、同月一九日ころ、原告らに対し、本件保険設計書を郵送しているが、右郵送のみで右説明義務を尽くしたことにならないことは、右と同様である。なお、本件変額保険契約の申込書(甲二の1、2)には、原告らが「ご契約のしおり約款」を受領した旨の受領印が押なつされているが、右しおり約款は、同年八月一二日ころ甲七の封筒で原告武田宅に郵送されたものであり、右申込書作成の際には、原告らは、右しおり約款を受領していない。

右事実によれば、被告浜崎に右(一)の説明義務違反があったことは明らかというべきである。

(五) 原告らの損害

(1) 被告泉、同佐藤及び同浜崎の右各不法行為により、原告武田は前記一3(五)の解約返戻金と借入金返済額との差額損失六八三五万八九円の、原告林は同(六)の解約返戻金と借入金返済額との差額損失六八〇八万一五七三円の損害を被った。

(2) 原告らは、本件訴訟の提起・追行を原告ら訴訟代理人に委任した。それによる弁護士費用の損害は、右各損害の一割に当たる原告武田については六八三万円、原告林については六八〇万円が相当である。

(六) まとめ

よって、被告泉に対しては民法七〇九条に基づき、被告佐藤に対しては同条又は同法七一九条二項に基づき、被告佐藤の使用者である被告渡邊に対しては同法七一五条一項に基づき、被告浜崎に対しては同法七〇九条に基づき、その使用者で、所属保険会社である被告ニコスに対しては同法七一五条一項又は募取法一一条一項に基づき、原告武田は七五一八万八九円の、原告林は七四八八万一七五三円の各損害賠償(ほかに、不法行為後である訴状送達日の翌日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払)を求める。

2  被告泉の主張

(一) 変額保険を募集する際の募集人の説明義務の範囲としては、解約返戻金の金額は相当程度株式等の相場変動を受けること又は解約返戻金の金額には元本割れを含め相当幅のある変動があり得ることの少なくとも一方を説明すれば足りるというべきである。

(二) 被告泉は、昭和六三年一一月一六日に原告武田方を訪問した際、原告らに対し、変額保険は変額という名のとおり保険金及び解約返戻金が変動すること及び保険契約者から預った保険料を株式等で運用する保険であることをグラフを書くなどして説明した。また、被告泉は、同月二二日に原告武田宅を再度訪問した際、原告ら及び敬太に対し、本件ファイナンスプラン設計書を示して、右と同様の説明に加えて、契約者貸付けによって変額保険の運用益を保険契約者が取得する方法等に至るまで、変額保険について詳細に説明したほか、右設計書に記載された「但し、変額保険の運用によっては、借入金全額返済の原資を割る場合あり。」との文言についても、原告ら及び敬太に対し、それが、「株式相場等の状況により保険料の運用がうまくいかなかった場合には、解約返戻金が銀行からの借入金より下回ることがあるということ」であることを説明した。さらに、被告泉は、平成元年二月一三日にも、原告らから再度変額保険についての説明を求められて原告武田方を訪問し、原告ら及び敬太に対し、変額保険の仕組みを説明した。

このように、被告泉は、変額保険の募集人として、原告らに対し必要な説明義務は十分に尽くしているものである。

(三) 原告らは、被告ニコスの変額保険への加入に必要な手続をした段階では、被告ニコスより本件保険設計書等の変額保険に関する資料の提供を受け、その仕組みを理解した上で、右加入手続を進めたものであるから、被告泉によるアリコジャパンの変額保険の勧誘及び説明と原告らの本件変額保険契約の締結及びその運用利回りの低下により原告らに生じた損失との間には相当因果関係がないというべきである。

3  被告佐藤及び同渡邊の主張

(一) 被告佐藤は、原告武田から相談を受けていた相続税対策のために変額保険販売資格を有する被告泉を原告らに紹介しただけであり、原告らに対し、変額保険の勧誘をしていない。また、被告佐藤は、変額保険の内容を説明できる立場になく、したがって、同被告に原告ら主張のような説明義務が生じる余地もない。

(二) 被告泉が勧誘したアリコジャパンの変額保険と原告らが加入した被告ニコスの変額保険とは、保険会社が異なっている上、その保険契約の内容も異なっている。原告らは、後者の変額保険について、その内容を理解した上、契約の締結をしたものであるから、被告佐藤が原告らに被告泉を紹介したことと原告らが被告ニコスと本件変額保険契約を締結したこととの間には相当因果関係がない。

4  被告ニコス及び同浜崎の主張

被告浜崎は、次のとおり原告らに対して説明義務を尽くした。

(一) 被告浜崎は、平成元年七月一四日、翌日に原告武田方を訪問するのに備え、原告武田をテスト1、原告林をテスト2と仮の名前を入れ、被告泉から聞いていた年齢や保険金額を入れた保険設計書(その内容は、本件保険設計書と同じ。)を作成した。

(二) 被告浜崎は、同月一五日、右保険設計書を持参して原告武田方を訪問し、原告らの医務検査が終了した後、原告らに対し、まず、「会社案内」(甲二八)のパンフレットを交付して、被告ニコスが世界で初めて変額保険を販売したことなど被告ニコスの説明をし、次いで、変額保険の仕組み、すなわち変額保険は特別勘定を有し、保険料を株式や債券等に投資するため死亡保険金や解約返戻金の金額に変動があることを説明し、特に被告ニコスの変額保険の特長として三つの特別勘定すなわち日本株式型、米国株式型、金融市場型の各特別勘定を有していることを説明した。その上で、被告浜崎は、原告らに対し、右保険設計書を示して、変額保険の種類(終身型一時払式)、保険金額、保険料、特別勘定の資産運用実績例表等を口頭で説明し、変額保険の仕組みを重点的に説明をしたほか、「ご契約のしおり約款」も、原告らに交付した。

(三) 被告浜崎は、その後、同月一九日ころ、右保険設計書と同じ内容の本件保険設計書を原告らに郵送しており、原告らは、右のような被告浜崎の説明や各種資料により変額保険の内容及び特質を理解した上、原告武田は同年八月九日に、原告林は同月三〇日にそれぞれ保険料を払い込んで、本件変額保険契約を締結したものである。

第三  争点に対する判断

一  変額保険の特質及び募集上の規制等

1  変額保険(終身型)の特性

(一) 甲五四、乙三及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 変額保険は、昭和六一年七月に認可され、同年一〇月からその発売がされた。

(2) 従来の生命保険(定額保険)は、利息・配当金収入を中心とした安全性重視の運用を行い、運用成果が予定利率を下回った場合でも所定の給付額(保険金額・返戻額)が保証されていた。

(3) これに対し、変額保険は、保険契約の資産(保険料積立金)を運用するために設定された特別勘定においてその資産を主として株式等への投資によって運用し、その運用実績に基づき、保険金額や解約払戻金を変動させる仕組みの保険である。死亡・高度障害の際の基本保険金額が保証されるだけであり、変動保険金の額には保証がなく、契約を解除した場合の解約返戻金の額も、右運用実績に応じて増減し、最低保証はない。

(4) したがって、変額保険は、経済・金融情勢、運用の巧拙によって高い利益が期待できる反面、保険契約者が変動のリスクも負うことになるという、従来にはない特質(ハイリスク・ハイリターン)を有するものであり、このような保険契約者の自己責任原則に基づく保険は、我が国ではそれまで存在しなかった。

(二) 右に認定した変額保険の特質によれば、保険金額・解約返戻金の変動は、主として投資した株式等の価額変動により生じるものであるから、変額保険の包含する危険性は、基本的には、株式取引等と類似するということができる。

しかしながら、他面において、保険会社が特別勘定の資産の運用として株式取引等を直接的かつ専門的にするということによって、保険契約者にとっては、自ら直接株式取引等をする場合と比較して、右危険性の認識が間接的なものとなることは避けられず、したがって、右特質について十分な理解を欠くと、保険契約者が従来型の定額保険に慣れているということとあいまって、右危険性を十分に認識することが困難となるおそれがあるものといわざるを得ない。

2  変額保険の募集上の規制等

(一) 募取法は、その三条以下において、生命保険の募集について生命保険募集人の登録制度を設け、種々の規制をしているが、変額保険が前記のような従来の保険にはない特質を有し、その募集については、募集に当たる生命保険募集人自身が変額保険について十分な知識を持つ必要があることから、生命保険業界の自主規制として、生命保険協会(以下「生保協会」という。)が既に生命保険募集人として登録されている者に対して変額保険販売資格試験を実施し、その合格者として生保協会に登録された者だけが変額保険の募集をすることができるとする制度が設けられた(公知の事実)。

(二) また、募取法は、その一四条ないし一六条において保険募集上の禁止事項等を定めるなど、保険募集に関する規制を行い、保険契約者の保護を図っているが、変額保険の前記特質に照らして定額保険以上に慎重な募集対応が必要なところから、大蔵省は、昭和六一年七月一〇日付け銀第一九三三号「変額保険募集上の留意事項について」と題する通達による行政指導を行い、その中で、①将来の運用成績について断定的判断を提供する行為、②特別勘定運用成績について、募集人が恣意に過去の特定期間を取り上げ、それによって将来を予測する行為、③保険金額(死亡保険金の場合には最低保証を上回る金額)あるいは解約返戻金を保証する行為を特に禁止事項として掲げた(公知の事実)。

(三) さらに、生保協会は、自主規制として、変額保険の募集行為に関して、変額保険の仕組み、資産運用の方針等を募集に当たって顧客に開示することの重要性を考慮し、募集の際、①保険金額の増減と基本保険金額(最低死亡保証額)の関係、②資産運用方針、投資対象、③特別勘定資産の評価方法、④特別勘定の運用実績が、〇パーセント、4.5パーセント、九パーセントの場合についての保険金額の試算例、⑤解約返戻金額及び満期保険金額が保証されていないことの五項目につき、必ず顧客の確認を求めることとした。また、生保協会は、自主運営ルールとして、「募集文書図画作成基準」を設け、募集の際に使用する資料(募集文書図画)については、あらかじめ生保協会への登録の手続を経ることを必要として、登録を受けていない私製資料の使用を禁止し、特に、右特別勘定の運用実績を示す資料については、その試算例を右の〇パーセント、4.5パーセント、九パーセントの三通りの場合に限ることとした。(公知の事実)

二  被告泉の勧誘の具体的状況及び被告佐藤の関与の状況

1  甲一の1、2、二五、二六、丙一、丁二の1ないし3、三の1、2、一四、一五、二五の1、2及び原告武田、同林、被告泉、同佐藤各本人の供述によれば、次の各事実が認められる。

(一) 被告渡邊の事務所においては、顧客から相続税対策の相談を受けたときなどに、被告泉を顧客に紹介し、そのようなときは、被告佐藤が被告泉と共に顧客のもとを訪れ、被告泉において相続税対策として変額保険の勧誘をすることがあった。

(二) 被告佐藤は、昭和六三年一一月一六日、原告らの母なをの死亡に伴う原告らの相続税の申告期限が同年一二月二三日と迫ってきたことから、その相続税額の計算をした上、その説明のために原告武田方に赴いたが、かねてより原告武田から同原告自身の相続税対策の相談を受けていたため、その際、相続税対策の一つとして変額保険があることを紹介する目的で、被告泉を同行した。

(三) 被告泉は、同年一一月一六日、原告らの氏名部分並びに原告らの個別の保険料及び保険金額が記載された部分を除いては本件ファイナンスプラン設計書と同内容の設計書を持参して原告武田宅に赴き、同原告宅において、原告武田及び隣家に住む原告林に対し、本件変額保険について、保険契約者が支払った保険料を保険会社が株式を中心とする有価証券で運用するものであり、変額保険は従来の定額保険と異なりその運用実績によって被保険者が死亡した場合の死亡保険金や途中で解約した場合の解約返戻金が変動するものであることの説明をしたが、右説明は、主として右設計書に基づいて行われた。

被告泉の右説明について、原告らの記憶に残っているものとしては、本件変額保険は、遊んでいる土地の一部を担保にして銀行からお金を借りて保険料を一括払し、保険会社がそのお金を株などで運用し、その利益で生活を豊かにしていくということ、月に四〇万円位の利益が出て海外旅行もできるし、生活も豊かになるということ、自分は持ち出すお金はかからず、死亡したときは身内が保険金で相続税を払ってもまだ十分余裕が残るということなどである。

被告佐藤は、被告泉が原告らに対して右のような説明をしているとき、傍らでうなずいていた。

原告林は、被告泉の説明を聞いても、その内容を十分に理解することができなかったため、同原告の要望により、同月二二日に、再度、被告泉が同原告の夫の敬太の同席のもとで本件変額保険の説明をすることになった。

(四) 被告泉は、同月二二日、被告佐藤と共に原告武田方に赴き、原告ら及び敬太に対し、持参した本件ファイナンスプラン設計書に基づいて本件変額保険の説明をし、保険の加入を勧誘した。

被告泉の右説明について、原告らの記憶に残っているものとしては、遊んでいる土地の一部を担保として銀行からお金を借りて保険に加入し、後は保険会社にまかせておけばよい、二億円の保険に入れば一時払の保険料は八〇〇〇万円台になるが、借入れによるので自己資金は全く要らず、三年位すれば毎年二〇〇万円位は取り崩して使うことができる、などというものである。

(五) 本件ファイナンスプラン設計書の記載内容は、別紙「PF型相続対策・ファイナンスプラン設計書」(原告武田用に作成されたもの。甲一の1)及び別紙「運用計画表」(原告林用に作成された本件ファイナンスプラン設計書(甲一の2)の一部。その余の記載部分は、原告武田用に作成されたものと同じ。)のとおりである。

(六) 被告佐藤は、平成元年二月一三日、原告らの申告済みの相続税について還付を受けるための相続税の更正の請求書に原告らの押印を得る目的で原告武田方を訪れたが、その際、被告泉も、一緒に同原告宅を訪れ、原告らに対し、再度、本件変額保険に加入するように勧誘した。被告泉は、原告らに対し、何でも分からないことがあったら質問するように求めるなどして、本件変額保険について前回と同様の説明をしたが、原告らの記憶に残っているものとしては、保険の運用益でマンションが二つも買うことができる、四年位経てば二〇〇万円位取崩しができる、などというものである。

2  右に認定した本件ファイナンスプラン設計書の記載内容によれば、まず、「PF型相続対策・ファイナンスプランのメリット」として「現金支出ゼロ(Pay Free)」「一次相続税節減」「二次・三次相続税原資確保」などと記載され、その仕組図も、「土地時価」及び「路線価」が右肩上がりのほぼ直線となり、「借入金」の線も、ほぼ直線で右肩上がりとなっているものの、その勾配は土地時価や路線価よりも緩く、「保険資産(解約返戻金)」の線も、波形に変動しているものの一貫して右肩上がりとなっており、当初こそ、借入金を若干下回るものとされているものの、すぐに借入金の線を超えて、借入金を上回り、その程度も次第に大きくなるものとして記載されており、借入金との間に「含み益」が生じることが実線の矢印で表示されている。また、「解約返戻金」については、「変額保険の資産価値は、運用により増大し、数年間の運用で返済原資が確保される見込です。」と、「含み益」については「変額保険の資産価値(解約返戻金)と一時払保険料の差は、含み益として、非課税のまま温存されます。これと借入金との差額が運用益となります。」とそれぞれ記載されている。さらに、「実行手順と効果」の項では、「実行手順」の中に、①「毎年増大する借入金の返済原資は、変額保険の数年間運用で確保される見込である。差益は含み益となる。」、②「保険資産を相続税支払原資とする場合、長期分納とし利子税率(実行ベース)と運用利率の利ざやが得られる。」、③「相続発生のタイミングをにらみながら、適当な時期に保険資産の現金化…により、借入金を返済し、抵当権を全部又は一部解除する。」と記載され、その「効果」として、①については、「返済原資の確保」「含み益型財テク」、②については「相続税原資への流用可。但し、変額保険の運用によっては、借入金全額返済原資を割る場合あり。」、③については「運用保険資産による抵当権の解除が可能」と記載されている。最後に、運用計画表として、投入保険料を一億円、借入金を一億六四一万円、その支払利息を5.7パーセントとした場合の解約返戻金、運用益、支払利息、死亡保障合計の一年ないし五年後、一〇年後、一五年後の推移が記載されているが、そこでの運用実績は九パーセントと一二パーセントの場合のみが記載されている。

右に見た本件ファイナンスプラン設計書の記載内容は、見事なまでに本件変額保険のメリットないしハイリターンの側面のみが強調されており、その危険性すなわちハイリスクについては、わずかに、「但し、変額保険の運用によっては、借入金全額返済原資を割る場合あり。」と記載されているのみであるといって過言でない。

そして、被告泉が原告らに対し本件変額保険の説明に使用した本件ファイナンスプラン設計書は、前記一2(三)の生保協会の自主的運営ルールに明らかに違反した私製資料である上、その中の運用計画表で用いられた特別勘定の運用実績自体も、右ルールに違反していることが明らかである。

3  ところで、被告泉本人は、原告らに対し本件変額保険の説明をした際に右の「但し、変額保険の運用によっては、借入金全額返済原資を割る場合あり。」の記載文言についても具体的に説明した旨供述し、丙一にも同様の陳述記載があるが、原告武田、同林各本人は、いずれも被告泉が右文言について具体的に説明をしたことはない旨供述しており、右各供述に、本件ファイナンスプラン設計書の余りに本件変額保険のメリットないしハイリターンの側面のみを強調した記載内容及び被告泉が生保協会の自主的運営ルールを全く無視した私製資料を使用し、かつ、その中の特別勘定の運用実績についても右ルールを無視したものを使用しているなどの被告泉のルール無視の勧誘姿勢ないし勧誘方法を総合して判断すると、被告泉の右供述及び陳述記載は到底信用することができない。

また、被告泉は、原告らに対し死亡保険金や解約返戻金が変動するということを示す横の波線を入れたグラフを書いて解約返戻金が払込保険料を下回る危険性があることを説明した旨供述するが、もしも、本件変額保険の説明の際に右のようなグラフを書く必要があるというのなら、あらかじめ本件ファイナンスプラン設計書にその旨のグラフを記載しておいてしかるべきであるにもかかわらず、右設計書には、被告泉の書いたというグラフとは全く異なる前記のような解約返戻金についても専ら右肩上がりのグラフが記載されていること、及び右のような被告泉のルール無視の勧誘姿勢ないし勧誘方法に照らすと、右供述もにわかに信用し難い。

結局、被告泉は、原告らに対し、本件変額保険のメリットないしハイ・リターンの側面のみを強調した本件ファイナンスプラン設計書に基づき、右メリットないしハイリターンの側面のみを強調し、本件変額保険の危険性を殊更に軽視した説明をして、本件変額保険の勧誘をしたものといわざるを得ない。

なお、被告泉本人は、原告らに対し私製の本件ファイナンスプラン設計書に基づき説明したのみで、保険会社が正規に発行する本件保険設計書のような設計書に基づいて説明をしなかったことについて、原告らが本件変額保険に加入する段階で正規の保険設計書を作成した上、これに基づいて説明をする予定であった旨弁解するが、保険募集のための勧誘の段階で本件変額保険のメリットないしハイリターンの側面のみを強調した本件ファイナンスプラン設計書を利用して被勧誘者の保険加入の意思を固めさせ、加入する段階で初めて正規の保険設計書を交付するという方法は、前認定の変額保険募集上の各種規制の趣旨を潜脱するもので、極めて不当であるといわざるを得ない。

三  被告浜崎の変額保険についての説明の有無及びその内容・程度等

1  甲二の1、2、二五、二六、二八、三九、四一、乙四、丙一及び原告武田、同林、被告泉、同浜崎各本人の供述によれば、次の各事実が認められる。

(一) 被告浜崎は、前記第二の一2(六)のとおり、平成元年六月三〇日ころ、被告泉から、電話で、本件変額保険への加入を希望している者として原告らの紹介を受けた際、被告泉から、原告らが被告ニコスの本件変額保険への加入を希望していること、保険金額は二億円であること、加入意思の確認が取れているので医務検査を先にして欲しいことなどを告げられた。

(二) 被告浜崎は、前記第二の一3(一)のとおり、平成元年七月一五日午前一一時ころ、医師を同行して原告武田方に赴き、右医師がまず同原告の、続いて原告林の健康診断をして、原告武田方から帰った後、同日午後零時三〇分ころ、バス停まで右医師を見送って戻った被告浜崎は、その場で、原告らから本件変額保険契約の申込書を作成してもらい、その交付を受けて、同日午後一時ころ、原告らに対し、「これからテニスの試合がある。」などと言って、原告武田方から帰った。その間、被告浜崎は、原告らに対し、本件変額保険に関しては、被告ニコスの会社案内(甲二八)を示して、被告ニコスが世界で初めて変額保険を発売した会社であることの説明をした程度であった。

2  これに対し、被告浜崎本人は、①前日の七月一四日、事前に被告泉から聞いていたデータに基づき、本件保険設計書と同一内容で、原告武田の分をテスト1、原告林の分をテスト2とする保険設計書を作成した、②当日は、午前一〇時ころ、原告武田方に、まず、あいさつに訪れ、次いで、午前一一時ころ、医師と待ち合わせた上、同原告宅に赴き、右医師が午前一一時四〇分ころ原告らの健康診断を終えた後、右医師を近くのバス停まで見送って原告武田方に戻った、③その後、持参したテスト1、テスト2の各保険設計書に基づき、原告らに対し、本件変額保険の内容を具体的に説明した、④当時、被告泉の勤務するアリコジャパンとは変額保険の販売で競争関係にあったので、同社に負けないように被告ニコスの本件変額保険の特長などを具体的に説明した、⑤原告らが本件変額保険契約の申込書を作成した際に、「ご契約のしおり約款」(乙三と同じもの)を原告らに交付した、⑥右説明を終えて原告武田方を出た時は既に午後二時半になっていたので、当日予定されていた午後三時からのテニスの試合には間に合わないため、参加を断念したなどと供述し、乙四にも、同様の陳述記載がある。

しかしながら、右供述及び陳述記載は、次の理由により到底信用することができない。

(一) 原告武田、同林各本人は、一貫して、被告浜崎が当日の午前一一時ころ原告武田方に来て、午後一時ころ同原告方から帰った旨供述しているところ、甲三九の原告武田の手帳の当日欄には、一一時健康診断とフランス語で記載されているほか、甲四一の原告林の日記帳の当日欄には、「午前中大洗濯しているうちに、エクイタブルの保険会社がやってくる、洗たく途中で又健康診断をする、終ったのが一時頃、アミさん美容院へ行き今日はこんでいて二時に終って食事が三時近くなる」と記載されており、特に、原告林の右日記帳の記載は、その内容及び体裁の自然さ並びにその前後の時期の欄の記載内容及び体裁の自然さに照らして、十分に信用に値するものである。

(二) 被告浜崎は、当日はテニスの試合が午後三時から予定されていたとし、原告らに対する本件変額保険の説明のために右試合に参加することができなくなった旨供述するが、同被告において、右④の供述のように、もともと原告らに対し十分な説明をすることを予定していたならば、当初からテニスの試合への参加予定を中止しておくのが通常といえよう(同被告の供述によれば、原告武田方からテニスコートまで一時間二〇分程度かかるとする。)。

そして、何よりも、被告浜崎の右のようなテニスの試合の参加予定は、同被告が原告らに告げない限り、原告らにおいてこれを知る由のないはずのものであるところ、原告らが本件第六回口頭弁論期日に提出した甲二五、二六の各陳述書には、既に、被告浜崎が午後一時ころこれからテニスの試合があると言って帰った旨の記載があり、当日テニスの試合の参加予定があったことを記載した被告浜崎の陳述書(乙四)が証拠として提出されたのは、それより後のことである。

そうであるとすれば、被告浜崎が午後一時ころこれからテニスの試合があると言って帰った旨の原告らの各供述及び陳述記載の信用性には高いものがあるというべきである。

(三) 本件変額保険契約の申込書(乙一、二の各1)裏面の「会社用欄(取扱者の報告書)」には、保険契約者及び被保険者としての原告らに関する情報が記載されているが、右記載は、被告浜崎本人の供述により同被告が記載したものであることが認められるところ、甲三〇、原告武田、同林各本人の供述によれば、右記載内容のうち、原告林の名前、原告らの年収、既加入の保険の内容、海外渡航の予定、資産、預貯金、原告らの家系等の記載が虚偽あるいは誤りであることが認められる。

このことは、被告浜崎が、当日、原告らから右記載事項について逐一時間を掛けて事情聴取することをしなかったことをうかがわせるに十分である。

(四) 被告浜崎本人は、当日、原告らに対し、「ご契約のしおり約款」を交付した旨供述し、本件変額保険契約の申込書には原告らの受領印が押なつされているが、原告武田、同林各本人は、右受領の事実を否定し、右受領印は当日被告浜崎に指示されるままに押なつしたものであるとし、原告武田本人は、「ご契約のしおり約款」はその後平成元年八月一四日ころ甲七の封筒に入れられて原告武田のもとに郵送されてきた旨供述する。一方、被告浜崎本人は、この点について、右封筒は雑誌の日経マネー七月号(甲四三と同じもの)を郵送したものである旨供述する。

そこで、右封筒に入れられて郵送された物について検討すると、右封筒の消印から明らかなその郵便料金二五〇円で郵送することができる物は、弁論の全趣旨により、重さが二五〇グラムまでのものであることが認めれるところ、弁論の全趣旨によれば、「ご契約のしおり約款」は二五〇グラム未満であるのに対し、日経マネー七月号は二五〇グラムをはるかに超えることが認められる。これに加えて、既に保険料も全額払い込んだ原告武田のもとに日経マネー七月号を敢えて郵送するという必要性も必ずしも大きくないことを考慮すると、右封筒で郵送された物は、原告武田本人が供述するように「ご契約のしおり約款」であると認定するのが相当である。

(五) 被告浜崎本人は、さらに、当日原告らに対し本件変額保険について具体的に説明した理由として、被告ニコスがアリコジャパンと競争関係にあったため、被告泉との競争に勝つためであったことを挙げるが、もともと競争関係にあるはずの被告泉が敢えて被告浜崎に対し本件変額保険の加入希望者として、それも保険金額二億円もの高額の保険に加入を希望している者として原告らを紹介したということから、保険業界に身を置く被告浜崎としては、当然、原告らがアリコジャパンの本件変額保険に加入することについて、それを困難とさせる何らかの事情(例えば、謝絶)があるものと推測したはずであり、単に被告泉が被告浜崎と競争するために原告らを紹介してきたと考えたとする被告浜崎本人の供述は、余りに不自然かつ不合理である。

3  右1で認定した事実及び右2で判示したところを総合すると、結局、被告浜崎は、被告泉から、本件変額保険への加入希望者として原告らの紹介を受け、原告らが被告ニコスの本件変額保険への加入を希望していること、保険金額は二億円であること、加入意思の確認が取れているので医務検査を先にして欲しいことなどを告げられたことから、思いがけない情報に跳び付くように本件変額保険契約の締結を急ぐ余り、本件変額保険についての説明も満足にしないまま、原告らをして本件変額保険契約の申込みをさせたものといわざるを得ない。

四  被告泉の本件変額保険契約の成立及び保険料支払についての関与の状況

1  甲五、六の1、2、八、九の1、2、二五、二六、三三、四一、乙四、原告武田、同林、被告泉各本人の供述並びに弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。

(一) 原告ら所有の土地建物について、平成元年三月八日付けで原告ら及びオリックス(ただし、旧商号のファミリー信販株式会社)あての不動産鑑定評価書が作成されたが、これは、被告泉の働き掛けに基づき、オリックスが将来原告らに対し本件変額保険の保険料を融資する前提として鑑定依頼をしたものである(なお、被告泉本人は、右鑑定評価書作成に関与したことを否定する供述をしているが、オリックスからの原告らに対する本件保険契約の保険料の融資は、後記認定のとおり被告泉の紹介により行われていること、及びその当時、オリックスが被告泉からの働き掛けを抜きにして原告ら所有の不動産について鑑定を依頼する事情は証拠上全くうかがわれないことに照らして、右供述は、到底信用することができない。)。

(二) 被告泉は、原告らを被告浜崎に紹介するのに先立ち、原告武田に対し、平成元年六月二七日、電話で、健康診断の結果は審査に通らなかったが、エクイタブル生命という保険会社(被告ニコスのこと)にも内容の全く同じ保険があり、そちらの方が審査が緩やかであるので紹介する旨連絡をし、原告林についてもエクイタブル生命の関係でもう一度健康診断を受けてみることを勧めた。

(三) 被告泉は、同年七月二四日、原告林に対し、電話で、同原告所有の建物に保存登記がされていないので被告泉の方で右登記をするとして、必要書類をオリックスあてに郵送するように連絡をしてきたが、オリックスから本件変額保険契約の保険料の借入れをする手続を被告泉が進めていることを知らなかった同原告は、翌日、直接オリックスに電話をして、右登記は直接同原告の方でする旨伝えた。

(四) 原告武田は、かねてより、被告泉から、本件変額保険加入に伴う保険料の借入れは被告泉の方で手配する旨説明を受けていたが、同年八月に入って、同被告から、右借入れはオリックスからする旨を伝えられた。

(五) 被告泉は、同年八月二日、原告林に対し、電話で、被告ニコスでの健康診断の結果が心電図に異常があって不合格であることを告げるとともに、原告武田が保険料の借入れをするについて原告林が保証人になる必要があるとして、印鑑証明書を取っておくように連絡をしてきたが、原告林は、その翌日、原告武田から、被告泉は原告林も保険加入が可能であると言っている旨伝えられた。

(六) 被告泉は、同月四日、オリックスの横浜支店の担当者及び司法書士を連れて原告武田方を訪れ、前記第二の一3(三)のとおり、原告武田と右担当者との間で、保険料借入れのための原告武田所有の土地建物についての根抵当権設定手続及び右借入れ手続が行なわれ、所要の書類が作成された。

その際、被告泉は、右借入れについて連帯債務者となるために同席した原告林に対し、なおも、同原告は保険金額二億円の本件変額保険に加入することができるとして、相続税対策として被告ニコスの本件変額保険に加入するように勧誘をした。

(七) その後、原告林も、本件変額保険に加入することになり、前記第二の一3(四)のとおり、同月二四日、原告林とオリックスの担当者との間で、司法書士を交えて、保険料借入れのための原告林の土地建物についての根抵当権設定手続及び右借入れ手続が行われたが、その翌日ころ、被告泉は、原告武田を通じて、原告林に対し、保険料額(健康診断の結果により割り増しとなったもの)、登記費用等の必要経費の内訳及び借入金額並びに右保険料の振込先(被告泉の筆跡によるもの)が記載されたメモ(甲九の1)を交付し、その後、原告林は、右メモに基づき、保険料を被告ニコスに振り込んで支払った。

2  右認定事実によれば、被告泉は、単に、被告浜崎に対して原告らを本件変額保険の加入希望者として紹介したのみならず、本件変額保険の加入に不可欠な保険料の原資の借入れ手続をその後も積極的に推進したことが明らかであり、原告林に対しては、その後も被告ニコスの本件変額保険に加入させるために、なおも勧誘している事実が認められる。その上、被告泉は、被告ニコスでの原告らの健康診断の結果についても、いち早く情報を入手しているのみならず、原告林については、保険料の振込先の指示までしており、これらの事実は、被告泉、同浜崎各本人の否定にもかかわらず、右被告両名が被告泉の右紹介後も密接に連絡を取り合っていたことを推認させるものである。

さらに、被告泉が、平成元年三月の時点で既にオリックスに働き掛けて原告ら所有の土地建物の鑑定評価をさせていたということは、前記第二の一2(三)及び(五)のとおり、原告武田が昭和六三年一二月七日に健康診断を受けて以来、そのたびに謝絶になっているにもかかわらず、敢えて何度も健康診断を受けさせ、最後は本来競争相手である被告ニコスの本件変額保険まで紹介して、結局これに原告らを加入させた事実と併せ考えると、被告泉の原告らを本件変額保険に加入させようとする意欲には、単に原告武田が本件変額保険への加入を希望していたから、という理由のみでは到底説明のつかない並々ならぬものがあったといわざるを得ない。そして、右意欲の結果が、原告らをして結局本件変額保険に加入させたものというべきである。

五  被告浜崎の保険料の原資借入れについての知情の有無

被告浜崎本人は、原告らがオリックスから本件変額保険契約の保険料の支払原資を借り入れたことについて同被告が関与したことを否定しているところ、前記四1(三)ないし(七)の事実によれば、右借入れは、被告泉の主導のもとに行われたものであることが明らかであり、被告浜崎が右借入れに積極的に関与したことを認めるに足りる証拠はない。

しかしながら、本件変額保険契約の保険料額は、原告武田については八七四六万円、原告林については八五三四万円と高額であり、原告らは右保険料を一時払するというのであるから、右契約締結の担当者である被告浜崎としては、当然に、原告らの右保険料の支払能力との関係で、その支払原資の捻出方法について重大な関心を持っていたはずである。また、そもそも本件変額保険の危険性の程度は保険料の捻出方法と密接な関係のあることが明らかであるから、本件変額保険の加入を勧誘するに当たっては、もともと生命保険募集人としては、当然その関係を説明するはずであり、それとの関係で捻出方法が話題に載るはずのものである。

被告浜崎本人は、この点について、平成元年七月一五日に原告らに対し保険料の捻出方法を尋ねたが、原告らは被告渡邊の事務所に一任してあるとしてそれ以上答えなかったため、オリックスからの借入れについては知らなかった旨供述する。

確かに、前記四1(四)の事実によれば、当時、原告ら自身も、被告泉からオリックスからの借入れ予定を聞かされていなかったことが認められるから、その時点では、被告浜崎としても、右借入れ予定を具体的に知ることができなかったにしても、原告らとしても、右保険料の捻出方法を被告浜崎に殊更に隠す必要は毫も存しなかったというべきであるから、原告らの右保険料支払の時点までには、当然そのことを尋ねれば、原告らから右借入れ予定を知ることができたはずである。そして、被告浜崎が、もし、そのことを右支払の時点まで尋ねなかったとすれば、本来保険料の支払能力の確認及び本件変額保険の危険性の程度を右保険加入希望者に説明することとの関係で当然確認すべき事柄を、敢えて原告らからは何らかの事情で確認しなかったものと推認せざるを得ない。

右に述べた点に加えて、前記四で認定判断したように、被告泉が被告ニコスでの原告らの健康診断の結果についても、いち早く情報を入手したり、原告林については保険料の振込先まで指示しているなど、被告泉が被告浜崎と密接に連絡を取り合っていたことが推認されることを併せ考えると、被告浜崎としても、原告らの保険料の支払に先立ち、原告らが右保険料の支払原資をオリックスから、又は少なくとも金融機関等から借り入れるものであることを被告泉を通じて知っていたものと推認するのが相当である。

六  本件変額保険の勧誘に当たっての説明義務の有無及びその内容・程度

前記一で判示した変額保険の特質及びそれに基づく募集上の規制等にかんがみると、変額保険には、いわゆるハイリスク・ハイリータンの性質があり、それについては、保険契約者の自己責任の原則が働くものであるが、右のような自己責任の原則を貫徹させるには、その前提として、変額保険を自ら販売し、特別勘定を運用する保険会社の側から、保険契約者の側に対し、そのような責任を負わせるのを相当とするだけの十分な情報が与えられる必要があるというべきであり、したがって、信義則上、変額保険の募集人には、その募集に当たり、顧客に対し、右一1で認定した変額保険の基本的仕組み及びその危険性、すなわち本件変額保険に即していえば、死亡・高度障害の際の基本保険金額が保証されるだけであり、変動保険金の額には保証がなく、契約を解除した場合の解約返戻金の額も主として株式等への投資によって運用される特別勘定の運用実績に応じて増減し、最低保証がないことを十分に説明すべき法的義務があるものというべきである。

さらに、顧客が保険料の支払原資を金融機関等からの借入れにより賄うときは、死亡・高度障害の事由が短期間で生じない場合には右借入れによる金利負担が増大し、運用実績のいかんによっては右借入金の元利が解約返戻金の額を大幅に上回る危険性があり、右のような危険性も、結局は変額保険の本来の危険性から生じるものというべきであるから、右危険性についての説明も右説明義務の範囲に含まれるというべきである。

そして、右説明義務違反の有無を判断するに当たっては、顧客の学歴や経歴、職業、株式等の有価証券取引についての知識、経験の有無等の属性を踏まえて、顧客が変額保険の右のような基本的仕組み及び危険性を理解するのに必要かつ十分な説明がされたか否かを客観的に判断すべきであり、その結果、右説明義務違反の事実が認められるときは、顧客が変額保険の締結により被った損失は、それが右危険性が現実化したことによるものと認められれば、特段の事情の認められない限り、右説明義務違反により被った損害に当たるものと認定するのが相当である。

七  被告泉の不法行為責任の有無

1  被告泉の説明義務違反の有無

(一)  前記二1ないし3で認定判断したところによれば、被告泉は、原告らに対し、本件変額保険のメリットないしハイリターンの側面のみを強調した本件ファイナンスプラン設計書に基づき、右メリットないしハイリターンの側面のみを強調し、本件変額保険の危険性を殊更に軽視した説明をして、本件変額保険の勧誘をしたものであるから、前記第二の一1(一)及び(二)の原告らの学歴、経歴及び職業等を踏まえると(なお、原告らが特に株式等の有価証券取引に精通していることを認めるに足りる証拠はない。)、右のような説明が前示の説明義務に違反するものであることは明らかである。

(二) ところで、右説明義務違反は、直接的には被告泉が加入を勧誘したアリコジャパンの変額保険との関係におけるものであるところ、原告ら主張の損害は、被告ニコスの本件変額保険に加入したことによるものであるから、被告泉に右説明義務違反があるからといって、直ちに被告ニコスの本件変額保険に加入したこととの関係で被告泉に説明義務違反があったものということはできない。

(三) しかしながら、前記四で認定判断したとおり、被告泉は、被告浜崎に対して原告らを本件変額保険の加入希望者として紹介したのみならず、本件変額保険加入に不可欠な保険料の原資の借入れ手続も積極的に推進し、また、被告浜崎とも密接に連絡を取り合っていたことが明らかである。

そうであるとすれば、このような場合、被告泉としては、原告らに対し、被告ニコスの本件変額保険への加入に先立ち本来募集人としての説明義務に明らかに違反するような説明をしていたのであるから、募集人に右説明義務が求められる前示のような趣旨にかんがみて、右説明義務の変容したものとして、被告ニコスの本件変額保険への加入においては原告らに対し本件変額保険の基本的仕組み及び危険性についての説明が十分に行われるように配慮すべき法的義務があるものと解するのが相当である。

しかるに、前記三で認定判断したとおり、被告浜崎は原告らに対し右の点についてほとんど説明をしておらず、原告らが本件変額保険契約の申込みをした後に本件保険設計書を郵送したのみであるところ(この点につき、被告浜崎について、原告らに対する説明義務違反が認められることは、後記八で判示するとおりである。)、被告泉が、被告浜崎に対し、原告らを紹介する際あるいはその後本件変額保険契約が成立するまでの間に、被告泉が前記のような説明義務違反に該当するような説明をしていたことを前提として、原告らに対して本件変額保険の基本的仕組み及び危険性についての説明を十分行うように要請し、又は被告浜崎に対してその点の確認を求めて、それが不十分であれば自ら再度原告らに対し右説明を十分行うなどの配慮をしたことを認めるに足りる証拠は全くない。

そうすると、被告浜崎には、原告らが被告ニコスの本件変額保険に加入したこととの関係においても、右に述べた変容した形での説明義務に違反する違法があったものというべきであり、右義務違反について、同被告に過失のあることは明らかである。

2  本件変額保険契約の締結による損害との相当因果関係の有無

右1で明らかにしたとおり、被告浜崎に、原告らが被告ニコスの本件変額保険に加入したこととの関係においても説明義務違反が認められる以上、原告らが本件変額保険契約の締結により被った後記認定の損害は、右説明義務違反によるものというべきである。

3  まとめ

以上によれば、被告泉には、民法七〇九条に基づく不法行為責任が認められる。

八  被告浜崎及び同ニコスの不法行為責任の有無

1  被告浜崎の説明義務違反の有無

(一) 前記三1ないし3で認定判断したところによれば、被告浜崎は、平成元年七月一五日に原告らに対し本件変額保険の基本的仕組み及びその危険性についてほとんど説明をしていないことが明らかである(なお、被告浜崎が原告らに対し被告ニコスの会社案内を示して被告ニコスが世界で初めて変額保険を発売した会社であることを説明した程度では、前示の説明義務を尽くしたことにならないことは、多言を要しない。)。

(二) ところで、被告浜崎は、その後、同月二〇日ころに原告らに対し本件保険設計書を郵送しているので、この点について検討する。

(1) 甲四の1、2によれば、本件保険設計書には、原告が加入予定の本件変額保険の保険金額、保険料のほかに、特別勘定の資産の運用実績例表が記載され、右運用実績例表には、〇パーセント、4.5パーセント、九パーセントの場合の死亡高度障害保険金及び解約返戻金の三年ないし一〇年後、一四年後及び一九年後の推移が記載されており、右推移を見る限り、〇パーセントの運用の場合、三年目から解約返戻金が保険料を下回り、その差額が年を追うごとに大きくなることが明らかである。そして、右運用実績例表については、「この例表の数値は当商品の営業案内にもご説明のとおり、運用実績により変動(上下)しますので、将来のお支払額をお約束するものではありません。」「例示の運用実績…は特別勘定にかかわるものであり、保険料全体に対するものではありません。」などと記載され、また、変額保険の仕組みについて、例一及び例二として保険金が変動する状況を波形のグラフで表し、「この保険は運用実績に応じて保険金額が変動します。したがって、」右グラフのように「保険金は上下し、一定ではありません。」と記載されている。さらに、特別勘定についても説明する記載があり、特別勘定の種類、資産の運用内容が説明されており、特に、「運用対象」について、「上場株式、公社債等の有価証券を主体とした運用を行うこととし、具体的投資対象は、国内外の経済・金融情勢、株式・公社債市場の動向等を勘案して決定します。」「ご契約者は、経済情勢や運用如何により高い収益を期待できますが、一方で株価の低下や、為替の変動による投資リスクを負うことになります。」と記載されている。

(2) 本件保険設計書の右記載内容に照らすと、原告らのような顧客が通常右設計書を読んだだけで右記載内容を正確に理解することができるとすれば、本件保険設計書を郵送しただけでも、本件変額保険の基本的仕組み及び危険性について書面をもって説明したものとして、前示の説明義務を尽くしたものといえなくもない。

しかしながら、前記一で判示した変額保険の特質及びそれに基づく募集上の規制等にかんがみると、もともと変額保険の仕組み及び危険性について顧客が正確に理解することが容易でないことを当然の前提として、変額保険募集上の留意事項について大蔵省の行政指導が行われ、また、生保協会の自主規制として、変額保険販売資格を設けたり、基本的な五項目について顧客に説明することを求めたりしているのであるから、生命保険募集人が本件保険設計書のような書面を、その内容を具体的に説明することなく単に郵送したのみでは、顧客があらかじめ変額保険の基本的仕組みや危険性について相当な知識を有していたなどの特段の事情の認められない限り、右説明義務を尽くしたものということは困難である。

そして、前記第二の一1(一)及び(二)の原告らの学歴、経歴及び職業等にかんがみると、客観的にみて、被告浜崎が本件保険設計書を単に原告らに郵送したことをもって、原告らが変額保険の基本的仕組み及び危険性を理解するのに必要かつ十分な説明がされたものということは困難であり、右特段の事情を認めるに足りる証拠もないから(原告らは、事前に被告泉から本件変額保険の説明を受けていたが、それが極めて偏った内容のものであることは前認定のとおりであり、また、原告らが特に株式等の有価証券取引に精通していたことを認めるに足りる証拠もない。)、結局、被告浜崎が右説明義務を尽くしたものということはできない。

(三) 以上によれば、被告浜崎にも、原告らに対し本件変額保険の加入を勧誘するに当たって説明義務違反の違法があったものというべきであり、右説明義務違反について、同被告に過失のあることは明らかである。

2  本件変額保険契約締結による損害との相当因果関係の有無

右1で明らかにしたとおり、被告浜崎には本件変額保険の加入を勧誘するに当たっての説明義務違反が認められるから、原告らが本件変額保険契約の締結により被った後記認定の損害は、右説明義務違反によるものというべきである。

なお、前記五で認定判断したとおり、被告浜崎は、原告らが保険料の支払原資をオリックスから、又は少なくとも金融機関等から借り入れるものであることを、右保険料の支払に先立ち知っていたものと推認されるから、右借入れを前提とする原告らの後記認定の損害との関係で右説明義務違反との相当因果関係を認めることに支障はない(なお、仮に、被告浜崎が右借入れの事実を事前に知らなかったとしても、右五で判示したとおり、本件変額保険の危険性の程度は保険料の捻出方法と密接な関係があり、被告浜崎としては、もともと原告らに対し右捻出方法を確認した上、その関係を説明すべきであり、それも右説明義務の対象となるべきものであるから、結局、右相当因果関係を認めることの妨げとならない。)。

3  まとめ

以上によれば、被告浜崎には、民法七〇九条に基づく不法行為責任が、被告ニコスには同法七一五条一項に基づく使用者責任がそれぞれ認められる。

九  被告佐藤及び同渡邊の不法行為責任の有無

1  前記二の一1(三)、2(一)、(二)及び前記第三の二1(一)ないし(四)の各事実によれば、被告佐藤は、被告渡邊の事務所の事務員であり、右事務所においては、顧客から相続税対策の相談を受けたときなどに、右対策として変額保険の勧誘をしていた被告泉を顧客に紹介することがあったことから、そのようなときに、被告佐藤も被告泉と共に顧客のもとを訪れることがあったこと、被告佐藤が昭和六三年一一月一六日に初めて被告泉を伴って原告武田方を訪れたのも、右のような事情に基づくものであること、被告佐藤は、被告泉と共に原告武田方を全部で三回訪れているが、そのいずれの際も、専ら被告泉において本件変額保険の説明をし、被告佐藤は、その傍らにいて、時折うなずく程度であったことが認められる。

そして、被告佐藤は、生命保険募集人の資格も、変額保険販売資格も有していないことは、被告佐藤本人の供述及び弁論の全趣旨から明らかである。

2  右の各事実によれば、被告佐藤は、原告らに対し、相続税対策として本件変額保険の勧誘をしていた被告泉を紹介したにすぎず、右勧誘は、あくまでも被告泉がしたものというべきである。被告佐藤が原告らに本件変額保険の説明をしている被告泉の傍らでうなずくことがあったからといって、そのことが原告らに対し変額保険の勧誘をしたことにならないことは、多言を要しないところである。

そして、被告佐藤の右のような立場からすれば、被告佐藤に前示のような変額保険についての説明義務が生じる余地はないというべきである。

また、もともと変額保険の勧誘行為自体は、適法な行為であるから、被告泉をして変額保険の勧誘をさせるために原告らに被告泉を紹介したとしても、そのこと自体、何ら違法なことではなく、被告佐藤において、その限度を超えて、被告泉が前認定のような説明義務に違反する違法な勧誘をすることを知りながら敢えて被告泉を原告らに紹介したことを認めるに足りる証拠はない(そもそも変額保険販売資格を有しない被告佐藤にとって、被告泉の原告らに対する説明が右説明義務に違反するものか否かを判断すること自体困難というべきである。)

そうであるとすれば、その余の点について判断するまでもなく、被告佐藤に原告ら主張のような不法行為責任が生じる余地はなく、したがって、被告渡邊に使用者責任が生じる余地もないというべきである。

一〇  原告らの損害(弁護士費用を除く。)

1  前記第二の一3(五)、(六)によれば、原告らが本件変額保険契約を締結し、その後解約したことにより、原告武田については解約返戻金と借入金返済額との差額六八三五万八九円の、原告林については同じく差額六八〇八万一五七三円の各損失を受けたことが明らかである。

2  そして、甲一一ないし一三の各1、2、二一、二二の各1、2、二六、三七の1ないし3及び原告林本人の供述によれば、本件変額保険契約の解約に至る経緯として、次の各事実が認められる。

(一) 原告らは、平成三年九月ころ、被告ニコスから、「変額保険のご契約内容(契約応当日現在)のお知らせ」と題する書面(甲一一の1、2)の郵送を受け、同月一日現在の解約返戻金額が、原告武田については六〇七五万余円、原告林について五七〇九万余円と大きく支払保険料を下回っていることを知った。

(二) 同年一〇月二一日ころ、オリックスの横浜支店長が原告らのもとを訪れ、同支店長から、本件変額保険の運用益が減少しているとして、原告らの自宅の土地建物に設定されていた根抵当権の債務者をいずれも原告ら及び敬太に変更するとともに、極度額をいずれも五億二〇〇〇万円に変更することを求められ、原告らは、これを承諾して、同月二九日、その旨の根抵当権変更登記が経由された。

(三) 原告らは、右のとおり、解約返戻金額が減少していることを知って、その対応を相談するため、同年一一月一一日、被告佐藤、同渡邊及び同泉に原告武田方に集まってもらったが、右被告らから、今すぐに解約しないで長い目で見るようにアドバイスされ、それに従うことにした。

(四) その後、原告らは、オリックスから、平成四年三月ころ、遺言公正証書の作成やローン契約の有効期間の延長を求められ、さらに、同年一〇月二一日ころには、死亡保険金請求権や解約返戻金請求権等についての質権設定や原告林の長女の連帯保証を求められたりした。

(五) 原告らは、その間、同年九月ころには、被告ニコスから郵送された右(一)と同じ標題の書面(甲一二の1、2)により、同月一日現在の解約返戻金額が、原告武田については五〇五八万余円、原告林については四七五七万余円と更に減少していることを知った。

(六) 原告らは、同年一〇月二一日、オリックスの担当者のほかに、被告佐藤、同渡邊及び同泉に原告武田方に集まってもらって、今後の対応を相談し、さらに、同月三一日にも、被告佐藤、同泉、同浜崎に集まってもらって、相談した結果、右被告らの間には、なお、被告ニコスから契約者貸付けを受けるなどして対応し、長い目で見るようにとの意見もあったが、原告らは、解約を決断し、本件変額保険契約を解約するに至った。

3  右認定事実によれば、原告らが本件変額保険契約を解約するに至ったのは、原告らの予想に反して、見方を変えれば、被告泉の勧誘時の説明に反して、特別勘定の運用実績が悪化したことにより、解約返戻金額が年々減少し、一方、保険料の支払原資として借り入れた借入金の利息のみが増大するという事態が発生したことによるものであり、これは、正に、本件変額保険の危険性が現実化したものということができる。

したがって、原告らが本件変額保険契約を締結し、その後解約したことによる右損失は、被告泉及び同浜崎の前認定の説明義務違反により被った損害に当たるものと認定するのが相当であり、右認定を妨げる特段の事情を認めるに足りる証拠はない。

一一  過失相殺

事案にかんがみ、進んで、過失相殺について判断することにする。

1  前記二1で認定した事実によれば、原告らは、被告泉から、そのメリットないしハイリターンの側面のみが強調され、その危険性すなわちハイリスクの側面が軽視された本件ファイナンスプラン設計書に基づき本件変額保険の説明を受けたとはいえ、本件変額保険が、保険契約者が支払った保険料を保険会社が株式を中心とする有価証券で運用するものであり、被保険者が死亡した場合の死亡保険金や途中で解約した場合の解約返戻金がその名の示すとおり変動するものであること自体の説明は受けていたのであるから、本来、冷静に判断すれば、右運用次第では解約返戻金が支払保険料を下回る危険性があること、したがって、右保険料の支払原資を金融機関等から借り入れれば、その金利自体は期間の経過と共に一定割合で増大するものであるから、解約返戻金と返済を要する借入金の元利合計額との差額損失も期間の経過と共に増大する危険性があることをある程度認識することが可能であったはずである。

また、原告らは、本件変額保険契約の申込み後間もなく、被告浜崎から本件保険設計書の郵送を受けており、その記載内容を慎重に検討すれば、本件変額保険の右危険性をある程度認識することが可能であったはずであり、もし、その内容に不明な点があれば、被告浜崎に尋ねれば、それなりの説明を受けることも可能であったというべきである。

さらに、前記一〇2(一)で認定したとおり、平成三年九月ころには、原告らとしても、同月一日現在の解約返戻金が大きく支払保険料を下回っていることを知ったのであるから、少なくとも、その時点では、本件変額保険の危険性を十分に認識したはずであり、その時点で、解約していれば、損害額をより小さいものにすることができたはずである。

これらの点を考慮すると、原告らが本件変額保険契約を締結し、前認定の損害を被ったことについては、原告らにも相当程度の過失があるものといわざるを得ない。

2  しかしながら、他方、前認定のとおり、被告泉及び同浜崎の説明義務違反の程度は著しいこと、被告泉は、原告らが健康診断の結果アリコジャパンの変額保険については謝絶となったにもかかわらず、敢えて被告浜崎に原告らを紹介し、保険料の支払原資の借入れにも積極的に関与して原告らを被告ニコスの本件変額保険に加入させるなど、その勧誘の態様には悪質な面があること、被告浜崎も、もともと競争関係にあるはずの被告泉が敢えて被告浜崎に対し本件変額保険の加入希望者として、それも保険金額二億円もの高額の保険に加入を希望している者として原告らを紹介したということから、保険業界に身を置く被告浜崎としては、当然、原告らにアリコジャパンの本件変額保険に加入することが困難な何らかな事情(通常は謝絶が予想されよう。)があることを推測したはずであるにもかかわらず、その点について、原告らにも何ら確認することなく(この点は、弁論の全趣旨から明らかである。)、変額保険の加入手続を進めており、その一連の対応には、説明義務違反の点以外にも生命保険募集人として非難されてもやむを得ない面があることなどを考慮すると、被告泉及び同浜崎側の過失の程度には重いものがあるといわなければならない。

以上のほか、本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると、原告らの過失割合は五割と認定するのが相当である。

そうすると、五割の過失相殺後の原告らの損害額は、原告武田については三四一七万五〇四四円、原告林については三四〇四万七八六円となる。

一二  弁護士費用

原告らが本件訴訟の提起・追行のために原告ら訴訟代理人に訴訟委任をしたことは、本件記録上明らかなところ、本件訴訟の経緯及びその難易度等を考慮すると、被告泉及び同浜崎の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用額は、右過失相殺後の損害額の一割相当額、すなわち、原告武田については三四一万円、原告林については三四〇万円と認定するのが相当である。

第四  結論

以上によれば、原告らの被告泉、同被告浜崎及び同ニコスに対する請求は、主文第一、二項の限度でいずれも理由があるから認容し、その余はいずれも理由がないから棄却し、原告らの被告佐藤及び同渡邊に対する請求は、いずれも理由がないから棄却し、主文のとおり判決する。

(裁判官横山匡輝)

別紙<省略>

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